2017年8月4日金曜日

【海外報道】オリンピック競技場の建築で森林破壊と人権侵害に関連する木材使用の疑惑

建築・設計専門誌 dezeen

日本、隈研吾設計のオリンピック競技場で森林破壊につながる木材の使用中止を要求される
  
アミー・フリアーソン Amy Frearson | 2017512

日本政府は東京2020年オリンピック大会のため、隈研吾設計の競技場を建設しているが、森林破壊と人権侵害につながる木材を使っているとして非難を浴びている。

今週、日本政府に安価な熱帯林木材の使用を再考することを求めて、140,000筆の署名を認めた請願書が在スイスと在ドイツの日本大使館に届けられた。

ボルネオはサラワクの降雨林村落の元首長、ビロン・オヨイ(Bilong Oyoi)が在ベルン大使館に請願書を届けた。彼は、オリンピック競技場の建設に使われている木材がペナン島の先住民の暮らしかたを破壊していると主張して、次のようにいった――

「わたしは日本政府当局の各位にペナン住民のメッセージをお伝えいたします。サラワクでは、われわれの森林が伐採されており、樹木は非常にわずかしか残っていません。どうぞ、降雨林の残った土地を保護するために、われわれを助けてください」

40を超える慈善団体のグループが調査したところ、隈研吾設計のオリンピック競技場の建設に熱帯地方産合板が使われていることが判明した。
この請願運動は、40を超える慈善団体のグループが調査したところ、隈研吾設計のオリンピック競技場の建設に熱帯地方産合板が使われていることが判明したことを受けて、起ち上げられた。

スイスのブルノ・マンサー基金(Bruno Manser Fundは、当該の木材の流通経路を遡ると、人権侵害、違法伐採および降雨林破壊を避難されているマレーシアの伐採最大手業者、シン・ヤン(Shin Yang)に辿りつくと主張した。
[訳注]Bruno Manser19542005死亡宣告)はスイス生まれの環境活動家。1984年から1990年までサラワクに滞在して、伐採業に対抗する封鎖行動を組織。2000年にサラワクで消息を絶つ。

このような申し立ては、環境に対して、これまでで最大に配慮した競技大会を開催することによって「サステナビリティ(維持可能性)に対して世界的に高まる関心」に応えるという2020年オリンピック東京大会の宣言ヴィジョンの正統性を脅かしている。

ドイツで請願書を届けた、慈善団体「降雨林救済(RainforestRescue)」のマティアス・リットゲロット(Mathias Rittgerott)は、次のように述べた――

「オリンピックの要諦は、『フェアプレイ』と『世界の若者が共に集まる』ことだとされています。現実には、サラクワ先住民の人権と環境がオリンピックによって脅かされているのです。

「オリンピックの建築工事現場でサラクワ産の熱帯林木材を使うとは、まったく祝典にはなりません」




隈の設計は、なめらかな貝殻様構造を特色としたハディッドの設計と違って、植え込みと木々を点在させた木造建築を特徴としている。

大成建設が建設工事を請け負っており、同社は当初の設計案でもザハ・ハディッド・アーキテクツ(建築設計事務所)と組んでいた。

東京オリンピック組織委員会は「持続可能性に配慮した木材の調達基準」を公開し、今後3年間で建設する建築物で使う木材の調達戦略を定めた。

だが、報告の背後に控えるもうひとつの慈善団体、降雨林行動ネットワーク(Rainforest Action Network)は、基準の規定は現場打ちコンクリートの型枠で使う廉価型合板は例外であることを意味していると指摘した。

活動家たちは、使用されている木材が森林破壊および人権侵害に関連しているか否か、緊急審査を要求している。
オリンピック組織委員会はこれに反論し、建築に使う合板はすべて倫理に則って調達されたものだと主張し、次のように述べた――

「競技場建築の監督にあたる日本スポーツ振興センター(JSC)は東京2020年オリンピック組織委員会に対し、問題になっている合板は、維持可能な森林管理の振興に努めている国際非営利団体、森林認証プログラム Programme for the Endorsement of Forest Certification Schemes)の認証を受けていると報告しております。

JSCはさらに、その合板は東京2020年オリンピック組織委員会が策定した調達基準の法的側面および維持可能性に関する側面に適合していると確認しました。

「東京2020年オリンピック組織委員会は今後とも、維持可能なオリンピックおよびパラリンピック大会の準備および開催に邁進し、JSCならびに他の関連団体と緊密に協力してまいる所存であります」

建築家の隈研吾は、疑惑に対して発言するのを拒んだ。彼は、「それは建築の問題であり、わたしはコメントする立場ではありません」とDezeen誌に語った。

活動家たちはいま、使用されている木材が森林破壊および人権侵害に関連しているか否か、緊急審査を要求しており、サラワクと東京の競技場建築工事現場の両方で抗議行動を実施している。

東京2020年オリンピック大会について、大会ロゴの最初のデザイナーが盗作を告発され、組織委員会が2度目の大会ロゴ・コンペを実施しなければならなかったので、競技場設計だけが唯一の障害だったのではない。

この競技場論争は、相当な注目を集めたので、第1Dezeenホットリスト――その年に建築および設計部門で最も報道価値のあった人物の包括的なリスト――で、隈研吾を第5に押し上げた。




【クレジット】

Dezeen, “Japan urged to stop using deforestation-linked wood for Kengo Kuma's Olympic stadium,” by Amy Frearson, posted on 12 May, 2017 at;

【関連サイト】

<プレスリリース>

2017421日/201781日更新


日本及び国際環境団体は本日、持続可能な2020 年東京オリンピックへのコミットメントに対する深刻な違反であるとして、東京の新国立競技場の建設における、悪評高いマレーシアの伐採企業であるシンヤン社製と考えられる熱帯材合板型枠の使用について緊急に調査するよう要請した。

国際オリンピック委員会(IOC)及び東京2020 大会関係者は、オリンピック関連の建設事業において違法かつ持続不可能な木材が使用されるリスクが高いことに対し、繰り返し情報提供を受けてきた。昨年12月の新国立競技場の建設着工の数日前には、40 を超える環境団体がIOC に対し、オリンピック関連の建設事業で使用される木材が合法かつ持続可能なものであることを確保するための東京2020大会関係者及び日本政府による取り組みが適切でないと警告する書簡を送付した。NGO は、オリンピックで使用される木材について強固なデューデリジェンスを義務付けることでリスクを直ちに軽減しなければ、生物多様性、気候変動、地域コミュニティに悪影響を与えることになると主張してきた。




FoE Japanなど環境NGO7団体が420日、新国立競技場の建設現場で、違法木材が使われているとして、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に対し、緊急に調査するよう要請した。問題になっているのは、違法伐採が横行するマレーシア・サラワク州産のシンヤン社製熱帯合板で、コンクリート型枠として使われている。(オルタナ編集部=吉田広子)

新国立競技場の建設現場。コンクリートの型枠にはシンヤン社のロゴが見える。
国内外の環境NGO7団体は「新国立競技場の建設現場で、サラワクの熱帯林の破壊および人権侵害につながる疑いのある熱帯合板が使われている」と報告している。独自の調査で明らかにした。




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