2017年8月22日火曜日

【英紙ガーディアン】イーロン・マスクらが殺人ロボット禁止を求める公開書簡


イーロン・マスクが先導して専門家116名が殺人ロボットの全面禁止を求める

テスラの社長やアルファベットのムスタファ・スレイマンが署名した公開書簡で国連に自律型殺傷兵器使用の阻止を訴える

映画『ロボコップ』2014年リメイク版に登場する殺人ロボット。公開書簡は、「自律型殺傷兵器は、武力紛争において、かつてないほど大規模で、人間に理解不能な速さの戦闘を可能にします」と指摘する。Photograph: Allstar/Studio Canal/Sportsphoto Ltd./Allstar

サミュエル・ギブス Samuel Gibbs
2017820 15.01 BST

世界有数のロボット工学と人工知能(AI)の先駆者らが殺人ロボットの開発および使用の禁止を国連に求めている。

テルサのイーロン・マスクとアルファベットのムスタファ・スレイマンが、自律型兵器の禁止を訴える26か国におよぶ国ぐにの116名の専門家グループを先導している。
Alphabet=グーグルおよびそのグループ各社の持株会社。

国連は最近、ドローン、戦車、自動機関銃を含め、そのような兵器に関する公式協議を開始することを票決した。AIおよびロボット工学企業の創業者グループはこの動きに先立って、目下進行中の殺人ロボット軍拡競争を阻止するように求めて、国連に公開書簡を送付した。

創業者らはその書簡で在来兵器に関する条約の再検討会議に対して、この軍拡競争には、火薬、核兵器につづく「第三次戦争革命」の扉を開く恐れがあると警告している。

創業者らは、次のように認〔したた〕めた――

「開発されるなら、自律型殺傷兵器は、武力紛争において、かつてないほど大規模で、人間に理解不能な速さの戦闘を可能にします。この兵器は、テロ攻撃に用いる武器、独裁者やテロリストが無防備な人口集団に対して使用する武器、望ましくない形で振る舞うようにハッキングされる武器になる可能性があります。

「行動するための時間は限られています。一度このパンドラの箱を開けば、蓋を閉じるのは困難です」

専門家らはこれに先立って、AIテクノロジーは、自律型兵器の展開が、数十年ではなく、数年以内に実行可能になる段階に達していると警告していた。AIは戦場を軍人にとって安全な場所に変えるのに使えるものの、自律して作動する攻撃兵器が戦闘開始のハードルを低くして、死者数が増大する結果になると恐れている。

この書簡は、国連がこの問題を協議するために月曜日に開催する予定だった会合を遅らせるのを余儀なくされたのを受けて、メルボルンで月曜日に開催された人工知能国際合同会議(IJCAI)の開会式で議題として提起され、ロボット工学分野の著名人らの支持を得ており、緊急措置の必要性を大いに強調している。

創業者らは、「倫理的に間違っている」自律型殺傷兵器システムは、1983年に発効した国連「特定在来型兵器(CCW)に関する条約」で規定された、化学兵器、意図的な失明をねらうレーザー兵器など、禁止兵器のリストに追加されるべきだと呼びかけている。

シドニーはニューサウスウェールズ大学で人工知能を専攻する教養(Sciencia)教授、トビー・ウォルシュは、次のように語った――

「およそすべてのテクノロジーは、善にも悪にも使えますし、人工知能も違いません。それは、不平等と貧困、気候変動がもたらす課題と進行中の世界金融危機など、現代社会が直面している差し迫った問題に対処するのに役立ちます。

「しかしながら、その同じテクノロジーが、戦争を産業化するための自律型兵器にもやはり採用されることもありえます。今日、われわれはどちらの未来を望むのか、選択を決定しなければなりません」

公開書簡署名者のひとり、マスクが、AIを人類存続に対する最大の脅威と名指し、実効性のある規制の必要性があると繰り返し警告してきたが、AIの破壊的潜在力は莫大であると一部の向きが考えているにしても、それは遠い将来のことだとも考えられている。

クリアパス・ロボティクスの創業者、ライアン・ギャリピーは、次のように述べた――

「自律型兵器システムは、まだSFの領域に留まっているAIの他分野における潜在的可能性と違って、たった今、開発の最先端に位置しており、世界の不安定化に加えて、無防備な人びとに深刻な危害を与える非常に現実的な潜在力を有しております」

世界屈指に先導的なAI会議、IJCAIが自律型殺傷兵器システムを議論する場に使われたのは、今回が最初の例ではなかった。同会議は2年前、マスクやスティーヴン・ホーキングなど、数千名のAI・ロボット工学研究者が署名し、同じような禁止を訴えた公開書簡を世に問う場として使われた。

英国政府は2015年、外務省が「この分野に関して、すでに国際人権法がじゅうぶんな規制を備えている」と陳述して、そのような自律型殺傷兵器禁止に反対した。外務省は、英国は自律型殺傷兵器を開発しておらず、英国が採用しているあらゆる兵器は「人間による監視および統制の対象」になるだろうと述べた。

殺人ロボットの提案は、ターミネーターのT800型やロボコップのED-209型といった、SFのイメージを思い起こさせるが、自律型殺傷兵器はすでに使用中である。サムスンのSGR-A1型哨兵銃は自律的に射撃することが技術的に可能であると報じられており、そのようなものとして配備されているかどうかは物議になっているものの、2.5メートル幅の朝鮮半島軍事境界線の韓国側ですでに使用されている。

定地型哨兵銃は、韓国政府向けに開発され、監視、音声認識、追跡、装備された機関銃またはグレネード・ランチャーによる発砲を実施する性能をもつ、この種の自律型システムの第一号である。だが、これが開発中の自律型兵器システムとしては唯一のものではなく、地上戦、航空戦、海上戦で使える試作型がさまざまにある。

BAEシステムズが開発中の英国のタラニス・ドローンは、空対空および空対地兵器を全自動で大陸間を搬送する能力を意図している。レッドアローズが使っている機体、BAEホークとほぼ同サイズの無人戦闘航空機が2013年に初のテスト飛行を実施しており、人間操縦型のトルネードGR4型戦闘機に代替することが決まっており、2030年の後のいつの日か、英国王立空軍の将来型攻撃空軍力システムの一環として実戦配備されると予想されている。

ロシア、米国、その他の諸国は目下、遠隔制御か自律運用か、どちらかが可能なロボット戦車を開発している。これらの開発事業には、ロシアのUran-9型無人戦闘地上車両の自律方式版から、在来型タンクに自律システムを組みこむ改良版までさまざまにある。

米国の自律型戦艦、ヴィガー・インダストリアルが建造したシー・ハンターは2016年に進水し、まだ開発中ながら、対潜水艦兵器など、攻撃能力を備えることを意図されている。水面下では、ボーイングのエコー・ヴォイジャー艦体に組み込まれる自律型潜水システムは、やはり長距離・深海軍事使用を想定されている。


【クレジット】

The Guardian, “Elon Musk leads 116 experts calling for outright ban of killer robots,” by Samuel Gibbs, posted on Sunday 20 August, 2017 at;



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