2016年8月30日火曜日

アルジャジーラ【フォトエッセイ】フクシマのサーファーは放射能の波に乗る~結果は20年後にわかるでしょう







フクシマのサーファーは放射能の波に乗る

「結果は、20年後になってはじめてわかるでしょう」

エリック・ラフォルグ Eric Lafforgue | 2016829 07:07 | AsiaJapan

【フクシマ発】日本2011311日午後246分、マグニチュード9.0の地震にみまわれ、津波が発生し、沿岸部に襲来した。災害死者数は18,500人に達し、そのうち90パーセントは津波に呑み込まれた犠牲者だった。2,561人の行方不明者がまだ見つかっていない。

福島第一核発電所もまた津波に襲われ、チェルノブイリ核発電所のメルトダウン惨事に匹敵するレベル7核災害になった。

政府のプレスリリースによれば、これまでの5年間で50,000人近くの人員が核発電所の除染し、放射能漏出を喰い止めるための作業にあたってきた。連日、5センチないし30センチの汚染土壌が剥ぎ取られ、プラスチック袋に詰めこまれて、より良い処分法が可能になるまで、町外れに保管されている。

核発電所から南に約50キロ、福島県いわき市の平豊間海岸は、核事故の前まで、日本のサーファーに指折りの人気があった波乗り地だった。

驚いたことに、砂と海水に放射能が含まれているにもかかわらず、一部の熱心なサーファーたちは波を捉えるために、相変わらずやって来ている。彼らはリスクに気づいており、また海辺に何百と積まれた汚染土砂の袋が、常にサーファーたちの健康リスクを思い出させずにはおかない。

あるサーファーはこういった――「日が照れば、日焼け止めを塗りますが、放射線には、なにがよいかわかりません。結果は、20年後になってはじめてわかるでしょう」。




核発電所から南に約50キロ、福島県いわき市の平豊間海岸は、核事故の前まで、日本のサーファーに指折りの人気があった波乗り地だった。[Eric Lafforgue/Al Jazeera]

「平豊間ビーチには週に何回もやって来て、サーフィンしています。やみつきなのですよ。サーフィンしないでおれません」とサーファー。横に『立入禁止』の看板。[Eric Lafforgue/Al Jazeera]

津波が襲来したとき、浜辺に何人かのサーファーがいた。「揺れが来て、平豊間の浜に戻ると、数分後に津波が到来しました」とサーファーが当時を語った。「浜にいたサーファーは、逃げる隙がありましたので、ひとりも死んでいません。自宅にいた者は、不意打ちを喰らって波にさらわれ、亡くなりました」。[Eric Lafforgue/Al Jazeera]

これまでの5年間で50,000人近くの人員が核発電所の除染し、放射能漏出を喰い止めるための作業にあたってきた。津波と核事故のため、500,000人近くの人びとが避難した。[Eric Lafforgue/Al Jazeera]

放射線検知器が放射能レベルを表示している。だが、政府が『帰還困難区域』に指定するレッド・ゾーンでは、検知器を見る人はいない。1ミリシーベルト――「ラドンを除いて、個人が1年間に浴びる平均蓄積バックグラウンド放射線量――が、許容最大放射線被曝量である。[Eric Lafforgue/Al Jazeera]

住民は、自宅の汚染レベルに応じて東京電力の補償金を受け取る。レッド・ゾーンでは、一人あたり月額1,000ドルになる。この富岡のように、フェンスの外側で暮らす人たちはそれほどの金額を受け取れないので、住民にあいだに緊張が生じる。[Eric Lafforgue/Al Jazeera]

『オレンジ・ゾーン』では、自宅の手入れをするための帰宅が住民に認められている。楢葉町のこの男性は、庭の除草のために帰宅した。妻は帰宅を拒み、男性は子どもたちを連れてくる気がない。彼自身も汚染された自宅で就寝しない。核発電所で働いていたので、危険性をよく知っている。[Eric Lafforgue/Al Jazeera]

富岡町のように、海から離れた町は地震と放射能の影響だけを受け、津波で被災しなかった。いずれにせよ、ゴースト・タウンに様変わりしてしまった。[Eric Lafforgue/Al Jazeera]

3000万トンの汚染土が野外で保管されている。[Eric Lafforgue/Al Jazeera]

平豊間の浜は白い砂浜で人気があったが、津波がその砂を押し流してしまった。今では、コンクリート壁が波除けになっている。あえてこのスポットでサーフィンする外国人がたまにいる、と日本人サーファー。[Eric Lafforgue/Al Jazeera]

サーファーたちはリスクを無視することができない。何百袋もの汚染された砂が浜辺に積まれている。「政府はこの地域の状況は元のように正常化していると言いつづけています。でも、見た限りでは、ほんの少しの人たちしか戻っていません。それも年配の人たちだけです。子どもたちを遠ざけています」と、サーファー。[Eric Lafforgue/Al Jazeera]

サーファーたちはリスクを承知しながら、ひるまず、この海でサーフィンするリスクを見に引き受けている。「日が照れば、日焼け止めを塗りますが、放射線には、なにがよいかわかりません。わたしたちが海水に浸かっている、この時の真の結果は、20年後になってはじめてわかるでしょう」と、サーファー。[Eric Lafforgue/Al Jazeera]

福島県の人びとは、核発電所ができるとこの辺鄙な地域に雇用と繁栄をもたらすので、県内の建設を支持した。[Eric Lafforgue/Al Jazeera]

ある核発電所従業員は、この地の海水は汚染がひどいので、断じて泳がないといった。発電所で働いていた彼の友人5人が脳に障害がある。[Eric Lafforgue/Al Jazeera]

【クレジット】

Al Jazeera, “Fukushima's surfers riding on radioactive waves,” by Eric Lafforgue, posted on August 29, 2016 at;





2016年8月17日水曜日

ホノルル誌シヴィルビート【#沖縄】#高江:ヤンバルの森を守る闘い

HONOLULU



高江:人里離れた沖縄の森を守る戦い

ヘリパッド建設が緊張を駆りたてるなか、抗議デモ行動の新しい波が沖縄の人里離れた北部森林で勃興する。

2016812日 ジョン・レットマン JonLetman

米国海兵隊がジャングル飛行訓練に使用するヘリパッド建設が新たに着工されるという知らせが伝わると、細く曲がりくねった山道の70号線沿いに先月の真夜中、工事阻止をめざして抗議する数百人の市民が集った(YouTube)。夜明け前になって、ヘリパッドを人里離れたヤンバルの森の平和と安全を直に脅かす危険施設として見る抗議グループに対して、500名ばかりの機動隊が排除行動の挙に出た。

米軍基地反対抗議行動は(今年6月、米軍基地撤退を要求する集会に推定65,000人のデモ参加者が結集する[ロサンジェルス・タイムズ紙]など)沖縄では日常的であるが、今回は違うと抗議参加者らはいった。

沖縄の作家、目取真俊(めどるましゅん)さんは、先日の抗議行動について「警察は今回、粗暴でした。人びとの意思を無視し、すぐに実力行使の挙に出ました」と言い表した。

目取真は状況を戒厳令になぞらえ、数年前に比べ、すっかり変わってしまったと述べた。

日本のメディアは、機動隊の数が抗議グループに比べて51の割合で上回っているという例を報道した。Kimiko Kawamura

日本国内のメディア報道(ジャパン・タイムズ)によれば、海沿いのもっとよく知られている別の闘争現場、辺野古岬(YouTube)から北へ車で1時間、東村の高江地区では、時にはデモ参加者の数が日本警察の機動隊に比べて51と大きく凌駕されていた。

秋までの完工が予定されている4か所の新ヘリパッド建設工事現場の入口封鎖をねらった座り込み地点から抗議行動参加者が強制的に連れ去られると、こころを揺さぶるような衝突がソーシャル・メディアに掲載されたヴィデオ現場中継映像によって捉えられた。この建設工事は、目下、米軍が統制しているヤンバルの森7,800ヘクタールのうち、4,000ヘクタールを変換することを定めた1996年の米日間合意の一端である。

(既存の着陸区画施設22か所および2015年完工のヘリパッド2か所に追加される)ヘリパッドは、米軍駐留規模の拡大であると考えられるとともに、MV22オスプレイが使うと目されており、このティルト・ローター(角度変換回転翼)ハイブリッド機は騒音と波乱万丈の事故記録の故に沖縄でほぼ万人から毛嫌いされていることから、猛反発を招いている。同型機が20155月、オアフ島のワイマナロで墜落しており、海兵隊員2名が死亡、他に20名が負傷した。

沖縄防衛局の報告(沖縄タイムス)によれば、6月に高江地区で実施されたオスプレイの夜間飛行訓練は400回近くになるといい、1日あたりで2014年度平均の8倍の増加になる。石原理絵さんは高江の住民であり、何回かは夜更けの午後1030分に飛行しており、その結果、少なくとも一家族が別の村に引っ越さなければならなかったと語った。

ヤンバルの森深く、米軍が戦闘訓練に使うヘリパッドの工事現場を囲むフェンスとゲートの外で睨み合う数百名の機動隊と抗議行動参加者。Kimiko Kawamura

これまでの抗議行動は熱烈なものではあったが、おおむね暴力とは無縁だった。ところが、ヘリパッド建設に必要なブルドーザーを通すために森林に新しい道が切り拓かれている今は、強引とでも言うべき戦術に向き合っていると抗議行動参加者らはいう。



ヤンバルの40パーセント近くが米軍の北部訓練場(上図)で占められており、そこには、もともと米軍兵らをヴェトナム戦争に投入する準備のために整備された「最適者生存」ジャングル戦闘訓練センター(下の動画)が設けられている。37,000エーカー(150平方キロ)に拡がる北部訓練場の荒涼地と密林は、近くの中部訓練場と併せて、米軍にとって大事な虎の子と考えられている。


だが、沖縄平和運動センター議長の山城博治さんは、次のように問いかける――

「アメリカは沖縄をなんと考えているんだ? わたしたちは植民地のように扱われている…米軍の最高司令官たちは、これはわれわれにとって最高の訓練場であると宣っており、わたしたちを追い出した日本政府にこれを要求したことには、なんの良心の呵責も感じていないのです」

そして、この紛争の核心部にあるのは、戦うことも逃げることもできない森である。

日本には目下、ユネスコ世界遺産指定地が20か所あり、そのうちの4か所が自然遺産である。人生のあらかたをヤンバルの探究ですごしてきた齢75歳の自然保護活動家、伊波義安(いはよしやす)さんは、ヤンバルの森がこれほど過度に軍事化されていなければ、世界遺産に選ばれていただろうという。

新しい米軍ヘリパッドの建設現場を示す手書き地図の前に立つ沖縄の自然保護活動家、伊波義安さん。Jon Letman

元化学教師の伊波さんは昨年、ある報道記者を森の探訪に連れていった。伊波さんは、ヤンバルの二重構造になった林冠が千金に値する生物種多様性を保全しており、日本のどこに比べても、推定50倍も多様な植物種、動物種、虫類を宿していると説明した。彼はヤンバルを時に「東洋のガラパゴス」になぞらえ、「世界全体の宝」と呼んだ。

森林は2本の本流と数十本の支流で分かたれ、山中に泉が点在しており、沖縄の浄水の約60パーセントを供給し、下流の野生生物に養分を運ぶ水系を形成している。森林、そして沖縄の豊かな海洋環境に注ぎこむマングローヴ湿地に、固有種の鳥類、オオコウモリ、魚類、蟹類が生息している。

ヤンバルは主としてイタジイ(ブナ科シイ属の常緑広葉樹)の森で構成されており、それが一面に生育したブロッコリーのように丘陵や山々を覆い、その下に、10メートルに達する木生シダ(樹木状になるシダ植物)、幻想的なキノコ、カンアオイ(ウマノスズクサ目ウマノスズクサ科カンアオイ属多年草)、その他、沖縄に自生する1,900植物種の多くが生育している。この密生したジャングルは、イノシシ、淡水生ハゼ、トンボ類、イボイモリ、アオミオカタニシ(ヤマタニシ科に分類される陸生貝類の一種)、リュウキュウヤマガメ、コオロギ、悪名高い沖縄ハブ、カエル類39種の生息域であり、カエルの10種は他所にはいない固有種である。

沖縄人によって、ヤンバルの森は保全されるべき場所として尊ばれており、野生生物の聖域として讃えられている。この野生を守る戦いは、いろいろな意味で、ハワイのマクア渓谷、カホーラウエ島、ポハクロアを軍事化から守る抗議運動を連想させる。

たいがいの沖縄人の見解では、ヘリパッドは、沖縄本島全域に散在する同類30か所および米軍基地と同様、島外の二大勢力(東京およびワシントンDC)によって下された決定の結果であり、人びとの意志を反映していない。

ヤンバルの場合、カウアイ島はコケエの天然林が格好の比較対象になる。沖縄本島はカウアイ島に比べて約20パーセント小さく、島内の20パーセントが米軍に占領されているが、ヤンバルとコケエには顕著な類似性がある。

ヤンバルクイナは、象徴的だが、見かけるのが稀な鳥であり、環境保全論者らは開発から守りたいと願っている。Jon Letman

この紛争に関して米国の当局者らは、この騒ぎは沖縄と日本政府のあいだの国内問題であり、わが方としては、コメントを控えたいという態度である。ハワイ2区選出のタルシー・ガバード下院議員は83日の公開討論会で沖縄紛争について質問されると、沖縄の地方自治体当局と日本政府の紛争は長引くと予想していると答え、「もちろん、米国政府が関わることはありません」と付言した。

在日米軍は、コメントを求められても反応しなかった。

ハリー・ハリス太平洋艦隊司令長官は727日、一般財団法人・日本再建イニシャティヴ主催フォーラムで、「わたしの見解では、米日同盟はかつてこれほど強固であったことはなく、地球レベルの指導力を求めて叫ぶ世界において、われわれの同盟の必要性はかつてこれほど強烈だったことはありませんでした」と演説した。

ハリス司令長官はつづけて、同盟は分かれ道にさしかかっており、撤収または現状維持、あるいは「ルールにもとづく秩序を維持するために志を共有するパートナー同士の協力」のなかから前途を選ばなければならないと語った。

ハリスはさらに続けて、「海の自由は大事です。空と宇宙の自由は大事です」といった。

だが、ヤンバルの森の抗議行動参加者たちにとって、デモクラシー、人権、環境尊重の意味付けが、この最近の騒動によって汚されているのと正しく同様に、自由に関わる問題はおおむね空理空論であるにすぎない。沖縄における抗議行動は、長期にわたって維持されてきた軍事同盟および二国間安全保障協力基本方針が民間人の支持を保障するものではないことを鋭敏に想い起こさせている。

沖縄の事例では、米日間同盟は相互間の尊敬と目標共有の表向きの顔を見せてはいるが、多くの沖縄人にとって、琉球朝日放送の記事が示す現実はもっと錯綜しており、彼らが守るために奮闘している海、空、森に比べて、平和からは遥かにほど遠い。

Follow Civil Beat on Facebook and Twitter. You can also sign up for Civil Beat’s free daily newsletter.

【筆者】

客員寄稿者:Jon Letman 
ジョン・レットマンはカウアイ島在住のフリー・ジャーナリスト。アジア太平洋地域の政治、人びと、環境について執筆。

Honolulu Civil Beat uses Civil Comments to encourage robust community discussion of articles and issues. Learn more in the CivilComments user guide. Or simply get started by creating an account and logging in. You can flag a comment for review by clicking the flag. (Note: Comments before May 18, 2016 will remain on our previous Facebook commenting system.)

Please take a brief survey about our new commenting system by clickinghere.

【クレジット】

HONOLULU CIVIL BEAT, “Fighting To Save A Remote Okinawan Forest,” by Jon Letman, posted on AUGUST 12, 2016 at;